AV女優が寿引退するというのは、クロサワとして嬉しい出来事である。
ただ、派手な性格の女優は、結婚生活もうまくいかないものだが、カレンは、とても芯の強い子で、ギャラもちゃんと貯金していたと聞くし何より頭がいい。
しかも、相手はカレンがAV女優という事を知らないで付き合いだしたがカレンがAV女優である事をカミングアウトしても、態度が変わらず、さらに優しくなったという。
「カレンの最後の男になれればいい!」とプロポーズしたそうで、その言葉に、カレンは結婚を決めたという。
それから、オノロケ話しを聞かされまくりであった。
ある日、カレンが泣きながら会いたいという。
嫌な予感がした。慰めの言葉を考えつつ、約束のホテルに向かった。
カレン「監督、見てください・・・」カレンは、私に写真を見せた。
そこには、純白のドレスに身を包んだカレンが立っている。
すごいキレイだ。
結婚式場ではプレフォトというのがあるらしく、ウェディングドレスを着て写真を撮ったらしい。
それができ上がってきて、あまりのウレシさに、思わず泣いてしまったという。その感動を誰かに伝えたかったらしく、クロサワに一番に見せにきたというのだ。
もしかしたら覚めてしまう夢かもしれない「結婚」が、今、現実のものとして実感でき、感動で震えながら泣いているカレン。
私はカレンの少女らしさと、真っ先に見せてくれた純情に目頭が熱くなった。カレンの両親が生きていれば・・・。
私は、断り続けていた結婚式に参列する事を約束した。
「6月の花嫁は幸せになれるって」と楽しみにしていた結婚式の前日。
カレンから電話がかかってきた。
カレン「監督、明日はお願いします!」
クロサワ「えー。本日は、ご多忙中のところ・・・」
カレンとの電話でスピーチの練習。
クロサワ「なんか、父親の気持ちになってきたよ。!」
カレン「えへへへっ。パパ!。」
カレン「あ、ちょっと、待って。彼氏が来たみたい。」
クロサワ「じゃう、明日ね~!」
カレン「うん。お休み!」
私はカレンとの電話を切ってから、ベッドに入った。
電話が鳴り続けている。夢か?
ふと気づくと、電話がなり続けていた様だ。
クロサワ「もしもーし」
「・・・・・シクシク。」どうやら相手は泣いているみたいだ。
だれだ?こんな夜中に。まさか!
クロサワ「カレンか? どうした?」
「(大泣)」
クロサワ「今、いくから・・・」と言って気づいたが、カレンの家を知らない。
やっとの事で、住所を聞くと、急いでタクシーでカレンの家に向かった。
つづく