つづき
何年かして、麻里から突然に電話があった。
麻里の父親が危篤で、どうしてもクロサワに会いたいと言うらしい。
今頃なぜ?と思ったが、麻里の願いであれば、どこにでも行く。
麻里との待ち合わせはロンドンだった。
クロサワは、準備もままならず成田までタクシーを飛ばした。
Fクラスを用意され快適だった様な気がするが、フライト中は「何の話だろう?」という思いで頭が一杯で、サービスを楽しむ余裕もなかった。
空港の出口で待つ麻里を見た時、時間が止まった気がした。
あの時と変わらぬ麻里がそこにいる。
麻里「ごめんなさい。どうしても、お父様がお話ししたいって・・・」
再会もそこそこに、案内された先は病院だった。
麻里の父親は、クロサワと麻里を前に静かに話し出した。
父親「二人には、すまない事をした・・・。 許してくれ。」
麻里は泣き出した。
そしてクロサワも全てを悟った。
父親「ごめんな、麻里・・・」
日本に戻ったクロサワに、少しして麻里から手紙が届いた。
父親が他界したという事と、麻里が離婚したという知らせだった。
クロサワは、いてもたってもいられず手紙に書いてある電話番号にかけた。
麻里「Hello…」 か細い声で麻里は出た。
クロサワ「麻里・・・」
麻里「・・・」
長い沈黙が二人の間に流れた。
麻里「先日は、、、ゴメンナさい。」
クロサワ「こちらこそ、、」
何から話せばいいのだろう? 戸惑っているクロサワに彼女が語りはじめた。
麻里「初めて、出会った時の事を覚えてる?」
クロサワ「ああ、もちろんだよ・・・」
それからは、時が戻った様に二人は話し出した。何時間も。。。
麻里「こんなに、笑ったのは、久しぶり・・・」
クロサワ「この前は、ロンドンからトンポ帰りだったから話しできなかったしね、逢ってゆっくり話したいね・・・。」
距離を忘れて何気なく言った一言だった。
麻里「・・・、会いたい。」
麻里「あっ、ワガママ言ってゴメンナさい。」
麻里は、昔からそうだった。自分を押し殺してきたのだろう。
クロサワ「それじゃ、あそこに行こうか?」
麻里「えっ 本当?」
クロサワ「飛行機がとれたらすぐに連絡するよ」
麻里「待ってる・・・」
クロサワ「どこだかわかる?」
麻里「うん。」
クロサワは、最短でローマ行きのチケットを購入して向かった。
昔、麻里がよく弾いてくれた曲のイメージに合う場所で、いつか二人で行きたいと話していた場所。それはバチカンのサン・ピエトロ寺院で、そこのピエタを見たいと話していた。
ダ・ヴィンチ空港で会った麻里は一段と綺麗だった。
翌日、遅めの朝食をとってから、二人でサン・ピエトロ大聖堂のピエタを見に行った。
魂が抜けたキリストを抱くマリアの像
クロサワは、ミケランジェロのピエタには感銘を受けました。
写真は、その時撮ったものです。
●アベ・マリア Ave Maria(Giulio Caccini)
* PIANO SOLO(STEINWAY D9 Version) DATAはYAMAHA C7から
http://kurosawa.moe-nifty.com/music/avemaria.mp3
* Violin Version (朱音ちゃん) & Piano 同時生録
http://kurosawa.moe-nifty.com/music/ave-vio.mp3
麻里とはイタリアで別れてから連絡をしていない。
またいつか、どこかで、会えたらいいなぁと思う。
それより、昔の話を思い出して、こうやってブログに書いてみたことでメールをもらえたりするのが、今はとても嬉しい。
AV監督なんてと、言われるかも知れませんが、クロサワは一期一会を大切にしているんです。