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S級泡姫が上がるとき①

    何年か前の暮れ、東京に初雪が降った日。
    帰路を急ぐクロサワの携帯が鳴った。

    女「私、誰だか分る?」
    最近は番号通知があるので、あまりなくなったが、こういう電話の掛け方をする女性はかなり多い。(私宛には・・・)
    声で分って欲しいというのが女性心理なのでしょうか?
    こういう場合、間違いは絶対に禁物である。。
    そんな時、声色を変えて、

    クロサワ「ちょっとまってください。私、アシスタントなんで、どちら様でしょうか?」
    と、私は応戦する。(私は監督だが、一人二役をこなす、アクターにもなる。)

    女「あっ、私は加古と申します。」
    (私の携帯は、アシスタントが出る場合も多いので、相手はすんなり名乗る)

    クロサワ「加古様ですね。お待ちください」
    と、時間をかせぎつつ、記憶を辿る・・・。
    もしかして?。彼女の声と、撮影シーンの顔が、頭の中で一致した。

    クロサワ「はーい。クロサワです。」
    加古「あっ、もしもし! わかりますか?」
    クロサワ「おお!わかるよって! どうしたの何年ぶりかなぁ~!」
    加古「嬉しい!。覚えていてくれたんですねー。・・・」

    クロサワ「加古ちゃん、俺に何ができる?。話してみてよ・・・」
    用件がなければ、何年ぶりかに電話をしてくる筈がない。こういう電話は即聞きがよかったりする。
    加古「・・・・・・」 言い出せない様である。ちょっと深刻かも。
    クロサワ「明日とか、飯でもどう?」
    加古「いえ、いいんです。ちょっと、どうしてるかなって・・・」
    クロサワ「よくないよっ。即アポは業界の決まりだよ。」
    加古「クスンッ」(鼻声である)
    なんか、まずそうだな、「即アポ」とかで笑いが出ないと、かなり深刻かも。
    (クロサワは、基本的に夫婦喧嘩と、悩み相談は食わない。が・・)

    クロサワ「今から、合うか?」
    確か彼女とは、吉原の高級店で働き始めたと電話で聞いたのが最後だ。
    クロサワ「今どこ?職場?」

    加古「・・・あの、そうです。今日で上がるんです。」
    彼女は泣きはじめた。

    これは、直接会った方がいいと思った。とりあえずタクシーをひろう。

    クロサワ「加古ちゃん、次、入ってんの?」
    加古「(泣)今日はフロント入れてきません。」

    クロサワ「わかったよ。俺、行くから、予約入れてよ」
    加古「ええっ~!」
    クロサワ「もうタクシーに乗ってるよ。吉原だよね?」
    加古「無理ですよ。(泣) ここは、薄野です。」

    えっ!、吉原から札幌に移ったのか?。それはキツイ!。
    しかし、「上がる」からには・・・。タクシーの時計は18時。
    札幌行きは便数が一番多いし、なんとかなると考え、運転手に羽田行きをたのむ。

    クロサワ「加古ちゃん。予約はオーラスで!今、向かっているから」
    加古「うぇーん」(号泣)
    クロサワ「予約、大丈夫? 折角いったのに、入れなかったらヤダよ」
    加古「ありがとう・・・。」
    加古は泣きながら、上がる理由を話した。

    札幌行きの飛行機の中、加古のトラブル(AV女優ならではの様々なトラブル等、ここでは書けない)を思い出していた。