永遠の若妻(前編)の つづき
私はファインダーをのぞきながら、口づけし合う二人に寄る。
おや?
ファインダー越しに見る奥様はまったく動きがない。
ズームアップしてみる。
モノクロのファンダーに奥様の顔がはっきりと写り、私は驚愕してカメラを揺らしそうになった。
自分の目が、見開いたままになっているのがわかる。
全身の毛が逆立っている。!
その時、ご主人がレンズ越しに語りかける。
ご主人「妻の、幸子です。」
その紹介に応える様、私は勇気を振り絞って、奥様の顔にレンズを向けた。そして近寄る。
ご主人「幸子と申します。こんな事、恥ずかしいですけど・・・よろしくお願いします。」
それから二人は、二人だけの世界に入って行った。
部屋の薄明かりの中、二人の愛の営みは延々と続いた。
雨がやみ、ヘッドフォンの音声モニターには、ご主人の息遣いだけが聞こえている。
ご主人「幸子、愛しているよ。離れたくない・・・」
カーテン越しに外が白みはじめたのがわかった。
それを感じたかの様に、ご主人の動きが激しく、
ご主人「はぁ、はぁ、さ・ち・こっ。 あぁぁぁぁぁ。」
息遣いが荒くなる。
ご主人「あっ、あっ、ああっ、あっ、あああっ、あっ」
ご主人「いくよー、さちこっ!。あっ、あっ、ハァーッ」
突き上げが激しさを増し、ベッドのきしむ音が部屋一杯に響く。
ご主人「かぁーっ。さちこぉっ!」
全ての力を振り絞りつくす様に、、、、果てた。。。
私はそのまま、お二人の幸せそうな顔をアップにして、テープエンドまでカメラを回し続けた。
そして、そのまま眠りについたお二人をそっとしつつ『テープは後日お渡しします』とメモを残して私はスタッフの待つホテルへと向かい、撤収した。
スタッフが現場の状況を私に尋ねたが、一切口外しなかった。
その営みは、人により理解できないものかもしれないからで、事務所に戻っても、自分だけでこのテープを編集する事にした。
ただ、残念な事にお二人は編集したビデオを見ることはなかった。
編集が完成したので、何度か連絡したが別荘の方は不在の様で何カ月か連絡がとれずにいたある日、弁護士から私に連絡が入りご主人が病気で亡くなったと聞いたのだ。
相続整理の段階で、私に尋ねたい事があると言い訪問してきた。
弁護士「撮影テープをお持ちですよね?」
クロサワ「何のですか?・・・」
弁護士「私は、船井さんの遺言でここに来ています。あなたがお持ちのテープ全てをそのまま処分したいのでご協力お願いします。」
私は、全てのテープを出した。
弁護士「この中には、船井さんと人形とのセックスが写っているのですか?」
クロサワ「・・・」
弁護士「遺族の方は、何のテープか知りたがっています。」
クロサワ「私は遺言通りテープ処分にご協力するまでです。」
弁護士「・・・・わかりました。」
全てのテープは、その場で引き出し破棄した。
クロサワは、この話をおかしな話として書いたのではない。
ダッチワイフに欲望をぶつけるプレイではなく、そこには愛が感じられた。テープを編集していて、ご主人の奥様に対する愛おしさが画面一杯に伝わってきたからだ。
奥様だけを残して、自分が先には行けないと思い。奥様を先に送ったのだろう。その後自分の寿命一杯まで、奥様との記念すべきAVを見て過ごそうと考えたのではないかと思う。
あの晩、船井様ご夫婦の営みは、今も私の心に残っている。