麻里はピアノがうまい。
普通であれば、クロサワと知り合う機会もなかった様な子だ。
当時クロサワも、楽器を見に行くのが好きで、楽器店を回ったりしていた
が、渋谷のヤマハで何度か麻里を見かけていた。
ある時、クロサワが通りかかると、ピアノピースを床にばら撒いた女性が
いて拾うのを手伝ったが、偶然にもその女性はいつも見かける麻里だった。
彼女は、恥ずかしそうに楽譜を戻すと店を出て行ってしまった。
それから暫くして店に行くと、また彼女を見かけたが、楽譜探しに没頭し
ている様だった。クロサワは雑誌を買って店を出ようとすると、
麻里「あの・・・」
クロサワ「はい。」
麻里「この前は、どうもありがとうございました。」
クロサワ「いえいえ。」
突然、お礼を言われてクロサワはビックリした。
麻里「・・・」
クロサワ「今日は、何を探していたの?」
それから麻里とクロサワは、かなり長い時間立ち話をしてしまった。
クロサワは、その時から何か淡い気持ちになってしまい、思わず翌日も
道玄坂を歩き店に向かうと・・・
そしてなんと彼女も店にいた。
清く正しい交際がはじまった。
つづく