前編のつづき
カレンの部屋に入って、まずい状況だと感じた。
純白のウェディングドレス写真が、ビリビリに裂かれて、玄関に撒かれている・・・。
結婚で転居する予定でダンボールが山積みの中、カレンは何時間も泣いていた。私は、ただただ傍にいるしかできなかった。
カレン「監督・・・ゴメンネ」
今は、何も聞くのをよそうと思い、カレンに膝枕をし髪を撫でた。
クロサワ「いいんだよ・・・」
外が明るくなって、結婚式の朝がきた。
カレン「・・・・」
クロサワ「・・・・・」
二人とも何も話さない。
そして、そのまま、夜になった。
カレン「本当は今頃、初夜だったんだよね。・・・」
クロサワ「・・・」
カレンは、すこしづつ話し始めた。
私と、電話を切った後に、婚約者がきて結婚式を中止した事。
式場の支払いは、気にしなくていいとの事。
もう二度と会わないとの事。
そして、結婚をやめる全ての理由は、、、カレンがAV女優であった事。
一方的に話しをした婚約者は、最後にカレンが出演していたAVの
テープをカレンに投げつけて、帰っていったという。
それから暫くして、カレンとの連絡は取れなくなった。
既にマンションも解約したらしい。
それから半年ほどして、突然にカレンから電話がかかってきた。
どうしても、次の日曜日にホテルで会いたいという。
場所は、思い出したくない筈のホテルロビー
私が、約束の時間にホテルへ行くと、そこにカレンがいた。
カレン「本当は、このホテルで・・・(泣)」
震えるカレンの肩を抱いて、ホテルの庭園に出た。
流れる滝を見ながら、落ち着いたのか、カレンは話し出した。
カレン「毎日、なんでって? 思ってた・・・」
バッグの中から、1枚の紙を出して私に見せる。
そこには、今日の日付と新郎名・新婦名が書いてある。
カレン「もうすぐ、はじまる・・・」
カレン「もうすぐ、彼の結婚式がはじまるの・・・」
クロサワ「えっ? カレンの婚約者だった奴?」
カレン「そう。別の人と結婚すんだぁ。」
カレンは、AV女優である事を理解して結婚を約束したのに、いきなりAV女優である事を理由に、結婚式の前日にキャンセルする男の事がどうしても理解できず、探偵に頼んで調査してもらったらしい。
そして、その彼がキャンセルした結婚式場で、今日の今から別の女性と結婚式をあげるというのだ。
クロサワ「どうするんだ?」
何か、嫌な予感がした。
カレン「ううん。なんもしないよ~。お別れをいいに来ただけ」
クロサワ「そっか。」
カレン「彼ね、すごいお嬢様をお嫁さんにすんだって あははっ」
カレン「私みたいな、汚れた女じゃいやだよねぇ~」
クロサワ「・・・」
カレン「あはっ。でも、私の夢の結婚式場なのになっ。」
クロサワ「もう行こう」
一刻も早くこの場から連れ出した方がいいと思ったその時。
カレン「あっ、式が始まるよっ。」
ガラス張りのチャペルに、人影が見える。
カレン「私が、あそこにいるんだったんだよね?」
クロサワ「・・・ もう、わすれよう。・・・」
カレン「私は、バージンロードを歩いちゃいけないんだよね?」
クロサワ「そんな事はないよ。!」
カレン「もう、きっと、私は結婚できないよっ。・・・」
クロサワ「きっと、いい奴が出てくるよ」
つきなみな答えしかできなくて、歯がゆかった。
後編につづく