クロサワの実家には「秘密の部屋」がある。
小学生の頃、学校から帰ると隠れ家的なその部屋でよく遊んでいた。
そこは、10畳程度の広さだが物置というか、意味不明のものが雑然とあり、壁にはスクリーンが掛けてあった。
確か、小学校4年か5年の時、映写機に8mmテープの掛け方を覚えた。
「りぼんの騎士」というソフトがあったので見たり、1970年の万国博覧会に行った時に撮影された自分の映像を見たりしていたが、音が出ないので、すぐに飽きた。
どちらかと言うと、TVの方に興味があった。
特に、11PMは小学校高学年のクロサワにとって大人の世界を覗ける窓でもあり、この頃から夜行性へとなって行ったと思う。
ある時、テレビで金庫に聴診器を当て、カリカリと回して開ける映画か何かを見た。
その時まで、気にも留めなかったが、秘密の部屋の金庫に異常な興味が涌いた。
しかも、ダイヤル式である。そして、自分の家にありながら、今まで一度も中を覗いた事がない。
小学生のクロサワは、見たいと思うと、もうどうにも止まらない。
開け方を知りたかったので、作戦を考えた。
作戦その1
小学生のクロサワ「お父さん、これ開けられる?」
作戦その2
小学生のクロサワ「ねえねえ、僕の大事な手紙を金庫にしまってくれる?」
作戦その3
小学生のクロサワ「そろそろ僕にも金庫の開け方を教えてよ!」
作戦はいずれも失敗に終わったが、開け方の雰囲気(同一方向への回転からはじまる)は解った。
それからは、今考えると気の遠くなる様なダイヤル操作を繰り返した。
(今考えると、1億近いパターンがある)
それから何日も、学校から帰るとチャレンジは続いた。
もう、諦めようと思ったその時、金庫近くの壁に数字の列を見つけた!
もしや!?
最後の数字を合わせ、ハンドルを引くと、重々しい音を立てて扉が開
いた。
目も眩む様なまばゆい光が?、そこに金銀財宝はなかった。
ただの書類の山であった・・・
とたんに興味が失せて、閉め様と思ったとき。
?
最上段に見覚えのある箱が見えた。
あれっ? と、思ってよく見ると、その箱は 8mm テープの箱の様である。
いつも見るテープは、棚に並んでいるので、なんで、金庫の中にあるんだろうと思った。
その中の1本を出して、映写機にかけてみる。
カタカタカタカタカタ・・・と、リズミカルな音を立てて映写機が回りだすと映像が映し出されてきた。
クロサワは、物心ついてから覚えている限りで、最大の興奮をした。
11PMなんて、子供の番組とさえ、思うほど、そこにリアルな映像が映し出された。
ねれなかった。!!!
その時、脳に刻まれた「運命」を素直に受け入れて、クロサワの今日がある。
補足:
Blog を書いていて、気になったので、実家の映写機を見に行った。
カメラ : canon Single-8 518
映写機: canon CINESTAR S-400